タカコーゲン角／丸：タカ高原の手書き感を受け継ぎ、扱いやすく進化したファミリー書体

手書きの書体には独特の深みと味わいがあります。その素朴な骨格ももちろんですが、輪郭の多少の粗さ加減が何とも自然で人間味に溢れており、私は好きなのです。これまでに「タカ書体」では「手書きシリーズ」として約20書体近くを制作しています。

このシリーズの第１弾が2014年制作の「タカ大海(たいかい) 」で、その後、第2弾に「タカ草原(そうげん) 」、そして、第3弾目になるのが「タカ高原(こうげん) 」です。大自然をテーマにした書体名とし、「手書き書体」ではほかのファミリー書体と分かりやすく区別するため、「タカ」の後につく書体名も漢字表記にしています。これにより、書体選択の際にもスムーズで判別しやすくなっています。

「タカ書体」ではそのネームにもそれなりにこだわって付けていますが、この「タカ高原(こうげん) 」では「タカ草原(そうげん) 」のほか「タカ海原(うなばら) 」の「原シリーズ」も考えたりしましたが今のとこ未定です。

この「手書きシリーズ」はその性質から単体でファミリー展開はありませんが、いくつかの書体はファミリー書体へ拡大し、輪郭の多少の粗さを取り払いキレイなラインに直した、いわゆる「キレイバージョン」を制作しています。ウェイトも4つ揃え、シーンに応じて使い分けできる選択肢を増やし、魅力アップを図りました。

そのスタートとして、まず「タカ高原(こうげん) 」を選びました。「タカ高原(こうげん) 」は私自身の名前にも通じ、ある種のこだわりを持っています。書体名も手書きの「タカ高原(こうげん) 」の漢字から「タカコーゲン」とカタカナ表記へと変え、分かりやすくしました。「タカ書体」全般で展開している「角」と「丸」のバージョンを作り、「タカコーゲン角」「タカコーゲン丸」としました。

このほか「タカ大海(たいかい) 」「タカ楽円(らくえん) 」「タカ音花(おとか) 」も順次、ファミリー書体へと拡大し「角」と「丸」のバージョンを持たせる制作を進めています。

私は普段の書体づくりの方法として大きく二つのルートがあります。

1）原字書きからはじめる。
2）いきなりPC上でデータからスタートする。

これらのアレンジもありますが、あまり詳しくはお話ししないでおきます。原字書きでは、独自に選定した紙質で、それ用の台紙を印刷して用意しています。初期の頃は、その都度用意した台紙で制作しており、形式はまちまちでした。

いずれの書体でも、台紙にいきなり1文字ずつ直に書いていきます。スケッチ風の下書きを鉛筆等で行わず、ほとんどは選定したサインペンで書きはじめます。基本的には輪郭書きですが、書体によっては輪郭書きをしながら大雑把にベタに塗りつぶしたりもします。

この方法は多分、私ならではのものです。「タカ書体」のベースのテーマは「手書き風の味わい、人間の温もりが感じられるもの」としており、その骨格や字形は非常に大事で、書体の生命線になります。

そのため、普段の筆記感覚で書き上げていくことを命題としています。自身の手が「自由にその文字を書く」ことを私なりの原字としており、一定のスピード感も求められます。理屈としては、頭の中で次にどの線をどう引くかを瞬時に決めて手が動いているのでしょうが、感覚的には手が動くままに任せている感じです。

フォントとして完成するまではいくつかの工程を踏み、段階ごとに初期原字の良さを保ちながら、折々調整を繰り返していきます。工程や各作業の細部は省略しますが、スケッチ風に文字をまとめようとして書いていくのは、私にとっては良くありません。いきなり書くのです。「タカコーゲン」の元である「タカ高原」はまさに手書き書体ですから、なおさらです。

1文字ずつ書いていって思い通りに書けなかった時は、別紙に書き直して台紙に貼っていきます。1文字のサイズは40ミリ角です。文字によって少し大きいほうがよい、小さいほうがよいということはありますが、後工程を考慮すると、このサイズが私にはベストです。

書体によって原字制作期間は異なりますが、「タカ高原」では漢字約3500字を10日間で書き上げました。もちろん完璧ではありません。あくまで原字ですが、されど原字です。書体と自身のコンディションによっては2倍、稀に3倍かかることもあります。

とにかく仕事は早いほうです。これは若い頃から書体づくりに限らず同様です。だから、ほぼ1人でこれまで多くの仕事を作ってこられたのだと思います。基本的にはお正月もお盆も無休で取り組みます。仕事というより創作だからです。気がつくとそれなりの年齢になりましたが、まだまだ創作エネルギーは満ちています。

8月14日／アサ
タカ高原、２日目だがタカ草原比べると進む予定（原字書き）だったが、逆のようだ。進みが悪い、太い分、楽かと思ったが形直すの以外と多くの時間かかる。結局どの書体、、、に関係なく、そこそこ時間はかかるものだ、まあ〜焦っても仕方ないコツコツやろう！！

8月14日／夕方
手書きで大切なことは楽しく書く、楽しく作ること。生命（いのち）を輝かせて描くこと。そのなかに生みの苦しみは時にはあるが、、、

8月16日／夕方
タカ高原の原字見るのもイヤな文字ある様になって来た、最近はー。何だろう、早くに持っていたイメージと全く違う、調整するのは苦しい感じ、だから中々進まない、、、途中で文字に対し（作業している書体）嫌悪感を示すこと今までも折々あった、時間が解決するかー

• 手書きの中でも私自身が特に気に入ってる。元になる「タカ高原」年月を経て見ていても段々好きになってる。
• 手書きの良さを充分発揮しながら、最終的に私自身の描くイメージで表現できた。
• 素朴な味わいの中にも力強さと、自然と一体の骨格、美しさをもつ。
• 角、丸のバージョンが夫々にその表情を変化させ、思い通りの「顔」に仕上がった。