全書体OpenType形式へ！使用許諾もより柔軟に＆新作73フォント追加。

生来絵を描くのが好きで、小学生時代は皆が弁当食べてる時に、私は漫画等を自分なりにアレンジ、短縮版にした手製の紙芝居を何度か披露したものです。今でも覚えているのは“柔道の父、嘉納治五郎”です。

小学6年生あたりから、漫画の模写を夢中でやってましたが、今考える現在の文字作り土台にもなっている気がします。また中学時代、美術時間に作ったポスターが中学、高校部門で第１位となりこの辺りから、デザイナーになろうと決めました。

中学時代にはレタリングを学びたく、新聞の見出し等を切り抜き自分なりに教材らしきものを作ったりして、明朝体の漢字など１文字ずつレタリングしました。エレメントの基本みたいなものを少しは身につけ始めていた様です。

高校では3年生で『レタリング同好会』を発足。少しばかりの同好会予算で、レタリングの教材をいくつか購入しレタリングを楽しく学びました。メンバーと学校祭の立体の看板を制作。評判は最高で、先生からも大変に喜ばれました。

志望していた美大は経済事情で断念、単身上京します。入学金等を貯めるため埼玉の某工場でがむしゃらに働き、翌年には念願の日本デザインスクール（現日本デザイン専門学校）に入学。

縁があって銀座にあるデザイン会社に見習いとして働くことになり、学校は中退。主に版下作業でしたが毎日が楽しく、社長からは高原こうげんのゲンからとって、スピードのゲンちゃんと呼ばれました。そのとき道具で『溝引き』と言うのを知りました。この溝引きとは思い通りのカーブラインをキレイに引くことが出来るもので、浮世絵や美人画などの曲線を描くのにも用いられていたらしいです。そしてこれが後のあの『タカハンド』の微妙なカーブラインを自由自在に使いこなせる原点だったのです。

東京でのデザイン修行は５年間ときめていたので、北海道に戻り2年間札幌のデザイン会社の勤務し、目標通り25歳で独立します。自分には遠い世界と眺めるだけだった写研が開催していた『石井賞タイプフェイスコンテスト』に対して、これこそ挑戦しないとダメだ！と俄に意欲が湧きはじめ、この辺りからから私の大きな夢は、「自分の書体をいつの日か世に出したい」というものになりました。

第3回のコンテストに初出品するも入選出来ず、2年後の第4回のコンテストで初入選（27才）。以来、連続入選、複数点入選を続けるも目標の第１位は届かないでいました。

その頃、モリサワも同じくコンテスト開催します。1984年の『第１回モリサワ賞・国際タイプフェイスコンテスト』にディスプレイタイプ部門に出品。世界16ヶ国から202点の多くの作品が集まり、審査の結果、私の作品は佳作でした。その上に１位と2位がいるので商品化は絶対無理で、入選の喜びより佳作だったことに本当にがっかりしていました。

ところが後日かかってきた電話では、このコンテストの受賞作品の中で商品化したいのは、１位と2位のものではなく私の作品をと言うものでした。この作品が後の『タカハンド』になるのです。

その後制作に着手します。当時、私はデザイン事務所の仕事は一通り目を通しながらも、『タカハンド』の制作に集中しました。1997年完成した『タカハンドM』は写植文字盤化され発売。34才の時でした。最終的にファミリーは５書体になりました。

完成後には再びコンテストへのチャレンジを開始し、『石井賞タイプフェイスコンテスト』は第11、12、13回と入選・3位入賞、『モリサワ賞』は第２回は佳作入選、第３回は最高位の金賞不在の中、銀賞と審査員賞のW受賞を果たしました。

28才時に大先輩に推薦いただき、日本タイポグラフィ協会の会員になります。

「タイプフェイス」はタイポグラフィの根っことも言えますが、シンボルマーク、ロゴタイプの世界もそうです。当時流行の『CI』『VI』の公募にも書体コンテストと同様、多くチャレンジ。30代がその全盛で、企業始め行政のお仕事も色々やらせてもらい、その多くは当時のロゴ・マーク集の刊行物に掲載されました。また『タイポアート』と称してタイポグラフィ作品を版画にし、個展を開いたり、タイポグラフィ協会のグループ展や海外展にも参加。その間、デザイン専門学校の非常勤講師として後輩の育成にも取り組みました。

20代の終わり頃に制作した絵文字をテーマにした本を30代半ばで自費出版し、漢字に少しでも関心を持って欲しいとの願いから北海道の全公立高校、札幌市内の全中学校に寄贈。その作品は当時の中学・高校の美術の教科書にも掲載され、今もレタリング関係の教科書に紹介されてます。

タカハンド以降に創作した『タカラインファミリー』が発売になったのは1995年の秋。「タカハンド」とは全く異なったデザインを試みたのです。

タカ書体の原点である「手書き風」を根幹に、漢字は全文字オール直線で表現。しかし不思議にも堅さも感じさせない、個性的な魅力を放った新しい書体のひとつの方向性になりました。書き文字をベースにした大胆な字体の単化と省略化。勿論、可読の範囲でのことは言うまでもありません。これまでにない書体デザインの表現への挑戦でした。

この作品は1997年の日本タイポグラフィ年鑑の大賞に選ばれました。タカラインファミリー5書体でのことです。どちらかというと地味な世界であったこのタイプフェイス部門からの大賞作品は初めてのこと。この『タカライン』の大胆な字体の単化と省略化のデザインはその後のデザイン書体にも少なからず影響を与えた様です。

「タカ書体」は日本タイポグラフィ年鑑のタイプフェイス部門において『タカライン』の1997年以降、連続11年入選の記録と複数入選、併せて以来2024年まで最多入選22回を記録、ベストワーク賞３回、審査員賞など嬉しいことに今なお高い評価を受け続けています。

モリサワさんとは『タカハンド』以来、長くお付き合いを頂き、いくつかの「タカ書体」を発売頂いています。その一方で自分の作った書体が次から次へとフォント商品となって世に出すことはそう簡単ではありません。ベンダーさんへのフォント商品としての売り込みも積極的に行い、いくつかの形で「タカ書体」をフォント商品として発売することが出来ました。

そこでこの先のことを考え、思い切って『タカ書体』を自社ブランドとして確立させ、発売も自社でやろうと決めスタートしました。それが2002年、53才の時です。

当時はダウンロードよりまだパッケージが主流。2002年スタート時から現在まで書体制作はもちろん私１人でやってます。Macが嫌い、かつ苦手でマウスも１度も握ったことがなかったアナログ人間。以降の書体制作はデザインすること・書くことの他に、フォント化するためにはイヤでもMacを使わなくてはならず、これがもう１つの大きな挑戦になるのです。

日本タイポグラフィ協会の機関誌の取材を受けた際に、フォントの個人ベンダーの先駆者ですねと言われ紹介もされました。タカラインが大賞受賞の新聞社取材の折、100書体目指すと明言し記事になりました。当時の自社HPにもその100書体目指すを表記していましたが、モリサワさんへのフォントも含めると約200書体（ファミリー含）近くになっていて、そのほか仮名書体は各７ウエイトを揃え、基本67書体、総合計では469書体。通常書体と合わせると約670書体。数は余り関係ないものの、１つ１つのコツコツの積み重ねの結果です。

自分自身ハッキリ言えるのはここまで来るには、持って生まれた性格が書体作りに向いていたのと、書体にかける熱い思いとこだわり、そして自慢の満々のエネルギーとかと思います。まだまだこれからもイイ書体作りを目指してやはりコツコツとやっていきます。