一つひとつ手描きで制作した手描きのリアル感「ねこのけフォント」

Instagramを始めた頃に「手帳の中身」を公開するハッシュタグを見つけて、人の手帳を見るのが楽しくて夢中になりました。
自分の手帳も投稿してみたら「字がかわいい」と褒めてもらえて、嬉しかったのが最初のきっかけです。

その後、しばらくして武蔵システムさんの「手書きでフォント」というソフトを知り、「そんなに簡単に作れるんだ」「じゃあ作ってみよう」と思ったのが、実際にフォント制作を始めた理由です。

最初に作ったフォントは、幅や大きさを揃える必要があることを知らず、漢字練習帳に書くような感覚で自由に書いたら、バランスがガタガタなフォントになってしまいました。（このフォントは現在非公開）

その後しばらくはソフトごと存在を忘れていたんですが、当時やっていたWEBSHOPで「文字について」をテーマにしたZINEを作ることにした時に、「おまけとして実際に使える手書きフォントを付けたら面白いのでは？」と思い立ち、書き上げたフォントが、一作目である「ねこふみフォント」の原型です。（このフォントも現在非公開）

小学生の頃も中学生の頃も、特に特徴のない文字を書いていました。
母が誰からも「達筆」と言われる字の人で、「お母さん、字上手いね」とよく言われていたので、自分も大人になったら自然と字が上手くなるんだろうなと漠然と思っていたんです。でも、そんなわけもなく。
達筆とは程遠いまま大人になり、習字は全然ダメで今も苦手です。
（※ちなみに「またたびフォント」は筆ペンで書いたフォントですが、ただの酔っ払いのへろへろ文字です）

そんな私が(上手くはありませんが)褒めてもらえるような今の字になったきっかけは高校時代の文通でした。
当時は今でいう「推し」を語る手段が現地か文通くらいしかなく、一番多い時で20人くらいと文通していたと思います。

その中で出会った全国津々浦々の“かわいい字”の人たちの文字をあれこれ真似するうちに、今の自分の字が完成しました。

「ねこのけフォント」は三作目の手書きフォントです。
最初は「サインペンで書いた普通の文字の『ねこふみフォント』」、次に「筆ペンで書いたへろへろ文字の『またたびフォント』」ときて、プロデューサー（ゆるてがきこむ管理人さん）から「次は太字を作ってみませんか？」と提案されました。

太めのペンを買って試してみたもののアナログには限界を感じ、この頃から半デジタルに移行することにしました。
デジタルで書いてみると意外に楽しくて、「細字の夏毛と太字の冬毛、2種類にするのはどうですか？」と逆にこちらから提案したのが始まりです。

（夏）はさくさく書ける文字にしたかったので、作業も楽しかった記憶があります。
一方、（冬）はデジタルのみで作ったんですが、本当に大変でした。
「とりあえず漢字は第一水準まで」と決めていたものの、「これ本当に第一水準？」と思うような難しい漢字もあって……。
線が潰れないように、でもバランスがおかしくならないように、と試行錯誤を繰り返していました。

私にイラストのお仕事を依頼してくださったのが出会いだったんですが、実はそれより何年も前に某ブログサイトで「この人のセンスいいなあ」と思いながら見ていた方でした。
だから「えっ、私でいいんですか？本当に？」と驚きましたし、憧れていた人からフォントについても「手書きフォント、もっと売り出してもいいと思います」と言ってもらえたのがすごく嬉しくて。
思わず「じゃあプロデュースしてくださいよ〜！」と伝えた結果、今につながっています。ほんと、言ってみるものですね……。

フォントの紹介画像などはプロデューサーが作っているのですが、フォントが完成した瞬間よりも、使用例のデザインを見せてもらった時の方が感動が大きいです。
「すごい、これ私の文字なんだ……」と、ようやく実感が湧きます。

（夏）は長文でもさらさら読めるように、（冬）は文字だけでも目立つように仕上げました。
気に入っている文字は記号なのですが、「♡」や「☆」はそれぞれに特徴が出ているかと。見てもらえると嬉しいです。

普通の文字、へろへろの文字、細字、太字と作ってきましたが、一周まわって今は「普通の文字を」「デジタル」で改めてフォント化したいと考えています。
まだ構想の段階ですが、すべてアナログで書いた「ねこふみフォント」の進化版のようなものを作れたらいいなと思っています。